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放送作家トキワ荘11

ジャッジを待つ間、俺たちを支配していたのは、何とも言えない焦燥感だった。
そんな心理が働いてか、俺たちはたびたびこんな話題をした。

「テレビ的にあと何枠空いているのか?」

合格点を取れば全員合格できるのだが、俺たちは度々こんな話しをした。
現在のところ、4人が合格しており、俺達の結論は残り1枠か2枠だろうという事だった。
何の根拠があるわけではないが「テレビ的にあと多くて2枠」というのは、定説になっていた。
それを争うのは、男子寮にいる4人だけではない。
BBQ以来顔を合わせていない女子寮も含まれていた。またこんな話もした。

「後は何色が欠けているか?」

当時、その時点で合格していたのは、レッド、イエロー、オレンジ、グリーンだった。
足りないのは後ブルーだけ。その視点が、残り1枠だ2枠だの論理に拍車をかけた。
24時間一緒にいるわけだから、みんな仲間だった。そしてライバルだった。
結局は自分次第だが、そんな事も俺を含め、みんなの頭の片隅にあった筈だ。

そんな中、五味さんから採点結果が返って来た。


65点△


今までの企画で最高点だ。自分では正直、面白い企画だとは思わなかった。
ただ、わかりやすさが良かったのだろう。ある意味で俺の読みは当たっていた。
五味さんの評価はこうだ。


わかりやすくていいね。ただ、グルメ物はもう少し見せ方の工夫が必要だよ。


その通りだった。ベタと言えばあまりにもベタな企画だった。
ただ、五味さんの場合、その変化のつけ方が難しかった。あくまでわかりやすさ重視。
そこに変化をつけるということは、それだけわかりやすさが減少する事になりかねない。
わかりやすくも、ベタにならぬよう変化をつける…。そのさじ加減はまだ掴めなかった。

この回の採点は、概ね点数が良かったものの、合格者は現れなかったんだ。
特にイエローは、76点を叩き出した。本人はリライトを希望したがすぐに却下された。

あと2回しか企画を提出出来ない…。俺はいつもそれだけを考えていた。
体は衰弱していったが、それはあまり気にならなかった。それより気持ちが磨り減った。
おそらく菅さんのお題があと一回はあるだろう。その他は五味さんか吉川さんか?

俺的に、一番読めなかったのは菅さんだ。吉川さん、五味さんの特性は何となく掴めた。
前述したように、俺がこの番組に応募した動機は菅さんに企画を見て貰いたかったからだ。
ガキの使いなどで、露出も一番多い筈の菅さんだったが、その特性は全く掴めなかった。
笑いのフィールドで勝負してみたかったが、どうすれば勝負になるかさえわからなかった。

そんな中、次のお題が発表された。採点はその菅さん。


「大物タレントを起用したG帯1時間番組」


これがお題だった…。

by madein30 | 2006-07-12 00:10 | 俺の思い出  

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